相続Q&Aブログ  自筆証書遺言と公正証書遺言 どちらで作成すべき?

query_builder 2022/11/19
ブログ
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相続相談者    

自筆証書遺言で遺言作成を考えています。メリットやデメリット 注意点などを教えて下さい      



相続相談員    

自筆証書遺言は、費用を掛けずに内容を知られることもなく自分だけで作成できるというメリットがあります。  


他方、デメリットとしては    

1遺言の方式があり、法律に沿った書き方でないと無効になってしまうこと

2遺言書が発見されない場合や、紛失、偽造、改ざんのおそれがあること

3法律知識がない人が作成すると方式違反になりやすく遺言の効力をめぐって 相続人間で争いになる可能性があること    


などがあります。     



相続相談者      

法律に従った書き方とはどのようなものですか?             



相続相談員      

有効な遺言と認められるには一定のルールに従って作成する必要があります。


それは      

1全文を自筆し、 2日付と氏名を書き、 3押印をすること  です。  

このうち一つでも欠けていたら遺言は無効になってしまいますので注意が必要です。      


ただし、最近の法改正で物件目録についてはパソコンで作成しても良いことになりました。 

具体的な書き方のポイントは次の通りです。    


〇筆記用具について  ボールペン、筆ペン、サインペン、万年筆、鉛筆などすべて可能。 但し、鉛筆は偽造や変造のリスクがあるため避けたほうがよい。   〇用紙の大きさ  特に指定はないが、なるべくA4サイズ程度のものが良い。   〇日付について  いつ作成した遺言かを特定するために必ず年月日をすべて記載する。 吉日などは日にちが特定できないため遺言自体が無効になってしまう。    

〇氏名について  氏名は、ニックネームなどでも本人が特定できれば有効だが、なるべく本名で書いたほうよい。  



相続相談者

正しい書き方さえできれば遺言が無効になる心配はないのでしょうか?   



相続相談員

いいえ、書き方のルール以外にも遺言が無効になってしまうケースがあります。  

それは、遺言者が遺言を書いたときに遺言能力が無かった場合です。たとえ遺言の方式通りに作成できていたとしても、遺言者にこの遺言能力がない場合は無効になってしまいます。    

遺言は、遺言者の意思に基づいて書かれることが大前提としてあるため、一定レベルの判断能力が求められているのです。

遺言書を作成する能力を遺言能力といい15歳以上の者であれば原則認められます。しかし、個別に認知症や精神疾患など判断能力が乏しい人が作成した場合は、意思能力が疑われてしまうことで遺言の効力が無効になってしまうケースがあります。    



相続相談者

認知症の高齢者が自分一人で書いた遺言者は無効になるリスクがあるということですね。  


相続相談員

そうですね。認知症が疑われる高齢者が一人で作成した遺言者は特に注意が必要です。 医者から診断書が出されている認知症の方が、一人で遺言を作成してしまい、この遺言の効力をめぐって相続人間で疑義が出てトラブルに発展してしまうようなケースも実際に多くあります。    



相続相談者  

その他に、どのようなことが問題となりやすいのですか?    



相続相談員

遺言の方式や意思能力に問題がなかったとしても、よくある問題となるケースとしては、遺言の内容が不明確であるためにその内容が実現できなくなってしまうことや、相続人の最低限の保証である遺留分に配慮がない遺言内容であるため遺留分侵害請求をされてしまうことなどがあり、これらは専門家が関与せずに一人で作成する自筆証書遺言ならではのリスクと言えるでしょう。    


自筆証書遺言は、一般に費用を掛けずに内容も知られることなく作成できるメリットがある反面、作成に慣れない一般の方が書くことで形式や内容に不備が生じる可能性も高く、結局これが原因で相続トラブルに繋がってしまう場合があります。      


相続相談者

正しく遺言書を書くことは思った以上に難しそうですね。 自分が書いた遺言によって後々相続人が揉めてしまうことだけは避けたいものですが、 何かよい方法はないのでしょうか?        



相続相談員  

自筆証書遺言のリスクを回避する方法としては、公正証書遺言で作成するという方法があります。公正証書遺言とは、公証人や証人立会のもとで公正証書として作成される遺言です。

公証役場で、遺言者が証人2人以上立ち合いのもと公証人の前で遺言の趣旨を伝えながら専門家が関与して作成される遺言です。 専門家である公証人が作成するため、遺言形式で無効となる心配が極めて少ないと言えますし、また、遺言内容がそのまま公証役場に保管されるので偽造紛失などの心配もありません。 また、自筆証書遺言では、裁判所に相続人が出向いて行う検認手続きが必要となりますが、公正証書遺言はその必要がなく、スムーズな相続手続きが可能となります。         




相続相談者  検認手続きとは何でしょうか?   



相続相談員  

検認とは、裁判所が遺言書の態様を確認するもので、自筆証書遺言の場合は必ずこの手続きが必要となります。 遺言書を放っておくと、中には相続人の一人が勝手に内容を書き換えてしまったり、破棄したりすることがあるかもしれません。このようなことを防止し遺言書の存在や内容を保存させておくのが検認手続きです。      



相続相談者 

検認手続きは必ずやらなければならないのですか?    



相続相談員

はい、自筆証書遺言の場合は必ず行うことになります。 自筆証書遺言を発見した相続人は、相続の開始を知った後、遅滞なく家庭裁判所に遺言書を提出して、検認の請求をしなければなりません。  この提出を怠るなどすると過料に処せられ、もし隠匿したとすれば相続人の資格も奪われてしまう場合もあります。 検認手続きは、管轄裁判所において相続人立ち合いの下で行われますが、遺言書の態様(用紙・筆記用具・内容・印・日付など)が確認された後に検認調書が作成され、遺言書の写しが裁判所に記録として保管され、原本は検認済みの表示の後に返還されます。       



相続相談者  

検認手続きによって家庭裁判所が遺言が有効か無効についても判断してくれるということでしょうか?     



相続相談員  

いいえ、たとえ検認手続きを行っても遺言書の有効性までは判断してもらえません。これはよくみなさん勘違いされやすい点なのですが、検認手続きは遺言書の存在や状態を確認し、後の偽造や紛失を防止することを主旨とする保存行為であって、遺言書の内容の有効無効の判断までするものではありません。 しかし、検認手続きを行い検認済証明書を取得することで、初めて不動産や金融機関の手続きなどが行えるようになりますので、この点においても避けては通れない手続きといえます。     




相続相談者

検認手続きは時間がかかるのですか?   



相続相談員

遺言書を発見してから検認が終了するまでにおおよそ2ヶ月前後はかかりますので、このことが自体が相続人の負担となる場合もあります。    

自筆証書遺言では、相続手続きがスムーズに進みにくい側面が多くあるのですが、その点、公正証書遺言は、予め公正証書として作成されたものあるため、検認手続きも不要のまま不動産の名義変更など諸々の手続きを行うことが可能となり、相続手続きが格段にスムーズになるというメリットもあります。       



相続相談者

自筆証書遺言より公正証書遺言の方が色々な面でリスクを減らせて間違いないようですね 

とはいえ公証役場に出向いて遺言内容をその場で正しく伝えられるか心配です。手続きのハードルが高そうです。費用も高いのではないでしょうか?      


相続相談員

その点は問題ありません。実務の場では、打合せもなく公証人の前でいきなり遺言の意思や内容を伝えるなんてことはやりません。実際には事前に公証人に遺言内容を確認してもらうやり取りがあり、準備万端に整えたうえで当日公証役場へ向かいます。

その場で、公証人が公正証書書面として作成した内容を、公証人が読み聞かせながら、二人の証人と一緒に内容に間違いないか確認し、全員が署名捺印をして、それだけで完了となります。  

遺言書の案の作成や公証人との事前のやり取り、証人の手配などもすべて行政書士などの専門家へ任せることも可能ですし、後は印鑑証明書など必要書類を揃えて指定された日に公証役場に出向いて確認をするだけなので思った以上に気軽に行うことができます。      


また、体調体調不良や入院中などの理由で公証役場に出向けない方には、公証人に出張してもらう方法によって公正証書遺言を作成することもできますので、健康面で事情がある方でも安心して遺言作成ができます。    



相続相談者

公正証書遺言の費用はどれくらいかかるのでしょうか?      



相続相談員  

遺言に関する財産の価格にもよりますが、遺言内容の相談から段取りまですべて専門家へ任せても15万円前後で作成できる場合が多いと思います。



相続相談者

紛失した場合はどうなるのでしょうか?  



相続相談員

公証役場で公正証書遺言を作成すると、その原本が公証役場で保管され謄本と正本を遺言者が受け取ることができます。原本の保存期間は原則20年ですが、実務的には遺言者の死後50年間保管され、遺言者本人であればいつでもその閲覧が可能です。


相続手続きには謄本か正本を使用しますが、紛失した場合には再発行できるので万一紛失しても遺言内容が実現できなくなる心配はありません。

謄本と正本のうち一通を遺言者が、もう一通を遺言執行者や親族などに渡しておくことが一般的です。


仮に遺言者が相続人に何も伝えていなかったとしても、遺言者の死後であれば相続人が公証役場に遺言の有無を確認することができますので発見されないリスクも少ないと言えます。



自筆証書遺言と比べて、一定の費用が掛かり、 遺言内容をスムーズに確実に実現性できるという意味では公正証書遺言のほうが格段に安心できます。  

手軽に自筆証書遺言を作成したとしても、後々相続の有効性をめぐる争いが発生してしまえば、その解決の費用や時間は多大になる可能性もあり、このようなことと比較しても公正証書遺言の作成手間や費用は大きな負担ではないと考えられます。


このような点を踏まえて、遺言書を作成する場合は公正証書遺言をお勧めするのが私たち専門家の間で一般的となっています。




















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